COLLECTION

2021 Autumn/Winter

ORLANDO オーランドー

ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)の「オーランドー」の主人公、オーランドーは16世紀のイングランド、テューダー朝末期に生まれました。貴族でありエリザベス一世の寵愛を受ける美少年でした。そしてロシア皇女、サーシャとスラップスティックな恋の破綻と、詩人としての挫折を経て、特命大使としてトルコに派遣され、様々な逸話を残します。その後、ジプシーの血を引く踊り子、ロジーナとの間に子供をもうけます。暴動の最中の30歳のある日、7日間の昏睡の後、目覚めると女性に生まれ変わっていました。容貌は相変わらずでしたが、肉体は女性となりました。ジプシーとの旅を続けていたオーランドーでありましたが、ペンとインクの無い生活や、ジプシーとの価値観の違いから、望郷の念やむなくやがてイギリスに帰国します。本国に戻った彼女/彼は18世紀ロンドン社交界の話題のレディとなりました。19世紀になるとヴィクトリア朝独特の時代精神に染まり、気の抜けた詩句しか書けないようになってしまいます。周囲の人々の中で、自分だけが結婚指輪をしていないことに動揺したオーランドーは、結婚願望を強く抱くようになります。やがて荒野で知り合ったシェルマーダインと婚約をし、南西風とともに海に去る夫を見送りました。館に戻ったか彼女/彼は詩の創作に励むようになります。およそ300年ぶりに再会した、ニコラス・グリーンに託した「樫の木」の詩稿は、七版も重ね、バーデット・クーツ記念章を受賞しました。もう20世紀です。オーランドーは1588年頃に知った樫の木の根元に「樫の木」を埋めようとしますが、埋めずに地面に落ちたままにしておきました。男子を出産し、36歳になったオーランドーは自分で車を運転し、立派な船長になった夫シェルマーダインを迎えに行きます。1928年10月11日、木曜日の真夜中でした。

ケンイチ イチカワ ブラック レーベルではジグゾーパズルの構造に着目し、パズルの1ピースの凹凸を男女の性器に見立て、オーランドーの両性具有性を表現しました。
また、永遠に年をとらず美しく、というエリザベス女王の願いによって定められた運命を、ジグゾーパズルの代替のきかない1ピースの運命と重ね合わせ、表しました。

ケンイチ イチカワ アートクチュールでは、19世紀半ばから20世紀初めの、ヴァージニア・ウルフとオーランドーにとっての「現代」に流行したバッスルという、ヒップラインを美しく見せるための腰当てをデザインの核とし、スカート裾から覗く濃い体毛の男性性をスカートの女性性と対比させ、オーランドーの両性具有性を強調しました。

また、このコスチュームはアイスランドの某歌姫に進呈するものであるため、昨年から猛威を振るうコロナウィルスと、彼女の歌の一つである”VIRUS(ウィルス)“に焦点を当て、ウィルスが侵入する、身体の繊細な部分である血管や皮膚を、糸と布で表現しました。

"ARLANDO by Virginia Woolf" / mixed media ヴァージニア・ウルフの「オーランドー」 / ミクストメディア

The Costume for a diva 某歌姫のためのコスチューム